MySQL 一時テーブル完全ガイド|作成・管理・活用法を徹底解説

目次

1. はじめに

MySQLを活用する際に、「一時テーブル(Temporary Table)」は、データの一時的な保存や処理を行うための便利な手段です。一時テーブルを利用することで、データを一時的に格納し、複雑なクエリの負荷を軽減したり、バッチ処理を効率化したりすることが可能になります。

本記事では、MySQLの一時テーブルとは何か、その用途やメリットについて詳しく解説していきます。

一時テーブルとは?

一時テーブル(Temporary Table)とは、セッション中のみ有効なテーブル のことを指します。
通常のテーブルと異なり、データベースに恒久的に保存されることはなく、セッションが終了すると自動的に削除 されます。

一時テーブルの特徴をまとめると、以下のようになります。

  • セッション単位で存在する(別の接続からはアクセス不可)
  • テーブル作成後のセッションが終了すると、自動削除される
  • 同名の通常テーブルが存在しても、干渉せずに使用できる
  • パフォーマンス改善のために使用されることが多い

一時テーブルは、データ分析や一時的なデータ処理に適しており、バッチ処理や集計処理の補助 として利用されることが一般的です。

一時テーブルを使用するメリット

一時テーブルを活用することで、データ処理を効率化できます。ここでは、主なメリットを3つ紹介します。

1. クエリのパフォーマンスを向上させる

通常、大量のデータを扱う場合、複数のJOINやサブクエリを駆使することで処理が複雑化し、データベースに負荷がかかります。一時テーブルを利用すれば、事前にデータをフィルタリングして保存 し、クエリの実行を高速化できます。

2. データの一時的な保存に最適

バッチ処理やデータ変換の際、一時的にデータを格納し、必要な処理を行うケースがあります。一時テーブルを使えば、データを一時的に保存し、メモリ内での高速処理が可能 になります。

3. 既存のデータを安全に保つ

本番環境のデータを直接操作するのはリスクがあります。一時テーブルを活用すれば、本番データを変更せずに処理を行い、エラーのリスクを軽減 できます。

まとめ

MySQLの一時テーブルは、データの一時的な保存と処理を行うための便利なツールです。

  • セッション単位で有効 であり、セッション終了時に削除される
  • パフォーマンス改善やバッチ処理に有効
  • 本番データを変更せずに安全にデータを操作できる

2. 一時テーブルの基本

MySQLの一時テーブル(Temporary Table)は、通常のテーブルと異なり、一時的にデータを格納するために利用されます。本セクションでは、一時テーブルの基本的な概念を理解するために、「通常のテーブルとの違い」や「内部一時テーブルとの違い」について詳しく解説します。

一時テーブルと通常のテーブルの違い

一時テーブルと通常のテーブルは、データの保存期間やアクセスの仕組み において大きな違いがあります。以下の表に主な違いをまとめました。

項目一時テーブル通常のテーブル
存在期間セッションが終了すると削除明示的に削除するまで存在
アクセスセッション内のみ利用可能(他の接続からは見えない)すべてのセッションで共有可能
競合同じ名前の通常テーブルが存在していても利用可能同じ名前のテーブルは作成不可
保存先MEMORY(デフォルト)または InnoDB の一時領域データベースのストレージに保存
永続性なし(セッション終了で削除)あり(データベースが維持)

ポイント

  • 一時テーブルは セッションごとに独立 しており、他のユーザーからは見えない。
  • 同じ名前の通常テーブルがあっても、エラーにならずに作成できる
  • CREATE TEMPORARY TABLE を使って明示的に作成し、セッションが終了すると自動的に削除 される。

一時テーブルと内部一時テーブルの違い

MySQLには、ユーザーが明示的に作成する 「一時テーブル」 とは別に、MySQLエンジンが自動的に作成する 「内部一時テーブル」 があります。この2つは似ていますが、用途や管理方法が異なります。

項目一時テーブル内部一時テーブル
作成方法CREATE TEMPORARY TABLE を使って明示的に作成MySQLが自動的に作成
利用目的ユーザーが特定の処理のために作成MySQLが複雑なクエリ(GROUP BY, ORDER BY)を処理するために作成
参照可能範囲セッション内でのみ利用可能クエリの実行中のみ有効
削除セッション終了時に削除されるクエリ完了後に自動削除される

内部一時テーブルとは?

  • MySQLは、一部のクエリ(GROUP BYORDER BYDISTINCT など)を最適化するために、内部的に一時テーブルを作成 する。
  • エンドユーザーが直接管理することはできないCREATE TEMPORARY TABLE のように明示的に作成はできない)。
  • クエリの実行時に必要に応じて作成され、クエリが完了すると自動的に削除 される。

内部一時テーブルの発生例

以下のようなクエリを実行すると、MySQLは内部的に一時テーブルを作成して処理を行うことがあります。

SELECT category, COUNT(*) 
FROM products 
GROUP BY category
ORDER BY COUNT(*) DESC;

この場合、MySQLは GROUP BY の結果を一時的に保存するための内部一時テーブル を作成し、
最終的な結果を計算するために利用します。

まとめ

  • 一時テーブルは、ユーザーが明示的に作成する一時的なテーブル であり、セッションが終了すると自動的に削除される。
  • 通常のテーブルとは異なり、他のセッションからアクセスできない
  • 内部一時テーブルは、MySQLが自動的に作成・削除する一時的なテーブル で、ユーザーが直接操作することはできない。

3. 一時テーブルの作成方法

MySQLの一時テーブル(Temporary Table)は、CREATE TEMPORARY TABLE 文を使用して作成できます。このセクションでは、一時テーブルの基本的な作成方法から、既存テーブルを基にした作成方法まで詳しく解説します。

一時テーブルの基本的な作成方法

MySQLでは、一時テーブルを作成するために CREATE TEMPORARY TABLE 文を使用します。

基本構文

CREATE TEMPORARY TABLE テーブル名 (
    カラム名 データ型 制約,
    カラム名 データ型 制約,
    ...
);

サンプルコード

以下のSQLは、users_temp という一時テーブルを作成し、id(整数型)、name(文字列型)、email(文字列型)の3つのカラムを持たせる例です。

CREATE TEMPORARY TABLE users_temp (
    id INT PRIMARY KEY,
    name VARCHAR(50),
    email VARCHAR(100)
);

このテーブルは、セッションが終了すると自動的に削除されるため、永続的なデータベースには影響を与えません

既存テーブルを基にした一時テーブルの作成

一時テーブルをゼロから作成するのではなく、既存のテーブル構造をコピーして作成する ことも可能です。

CREATE TEMPORARY TABLE ... SELECT を使用する

MySQLでは、SELECT 文の結果をもとに一時テーブルを作成することができます。

基本構文

CREATE TEMPORARY TABLE 一時テーブル名
SELECT * FROM 既存テーブル名;

サンプルコード

例えば、users テーブルのデータ構造をコピーし、新しい一時テーブル users_temp を作成する場合、次のように記述します。

CREATE TEMPORARY TABLE users_temp
SELECT * FROM users;

この方法では、users テーブルのカラム構造がそのまま users_temp に引き継がれますが、PRIMARY KEYINDEX などの制約はコピーされません

もし、テーブル構造だけをコピーしてデータを含めたくない場合は、WHERE 1=0 を追加します。

CREATE TEMPORARY TABLE users_temp
SELECT * FROM users WHERE 1=0;

このSQLでは、users テーブルのカラム定義はコピーされますが、データは含まれません。

一時テーブルを作成する際の注意点

1. 一時テーブルはセッション単位で有効

  • 一時テーブルは、作成したセッション内でのみ有効です。
  • 他の接続や別のユーザーからはアクセスできません。

2. 同じ名前の通常テーブルが存在していても問題なく作成可能

  • 例えば、データベースに users という通常のテーブルがあっても、同じ名前の users という一時テーブルを作成できます。
  • この場合、セッション内では一時テーブルが優先され、通常テーブルは見えなくなります。

3. ストレージエンジンの影響

  • 一時テーブルは、デフォルトで MEMORY エンジンが使用されますが、データ量が大きい場合は InnoDB の一時領域に保存されることがあります。
  • MEMORY エンジンを明示的に指定する場合は、以下のように記述します。
    CREATE TEMPORARY TABLE users_temp ( id INT PRIMARY KEY, name VARCHAR(50), email VARCHAR(100) ) ENGINE=MEMORY;
  • MEMORY エンジンは、高速ですがデータサイズの制限があるため、大量のデータを扱う場合は InnoDB の使用を検討しましょう。

まとめ

  • 一時テーブルは CREATE TEMPORARY TABLE を使って作成する。
  • 既存のテーブルをコピーして一時テーブルを作成することも可能(SELECT * FROM を使用)。
  • MEMORY エンジンを使用すると高速処理が可能だが、大量データには InnoDB が適している。
  • 一時テーブルはセッション単位で管理され、セッション終了時に自動的に削除される

4. 一時テーブルの使用方法

MySQLの一時テーブル(Temporary Table)は、通常のテーブルと同様に データの挿入・更新・削除・参照 などの操作を行うことができます。本セクションでは、それぞれの操作方法について詳しく解説します。

データの挿入

一時テーブルにデータを追加するには、通常の INSERT INTO 文を使用します。

基本構文

INSERT INTO 一時テーブル名 (カラム名1, カラム名2, ...)
VALUES (値1, 値2, ...);

サンプルコード

以下のSQLは、users_temp という一時テーブルにデータを挿入する例です。

INSERT INTO users_temp (id, name, email)
VALUES (1, '山田 太郎', 'taro@example.com');

また、既存のテーブルからデータをコピーして挿入することも可能です。

INSERT INTO users_temp (id, name, email)
SELECT id, name, email FROM users WHERE age >= 18;

このSQLでは、users テーブルから 18歳以上のユーザー のデータを一時テーブルに挿入しています。

データの更新

一時テーブル内のデータを変更するには、通常の UPDATE 文を使用します。

基本構文

UPDATE 一時テーブル名
SET カラム名 = 新しい値
WHERE 条件;

サンプルコード

例えば、users_temp テーブル内の id=1 のユーザーの名前を変更する場合、以下のように記述します。

UPDATE users_temp
SET name = '佐藤 一郎'
WHERE id = 1;

データの削除

不要になったデータを削除するには、DELETE 文を使用します。

基本構文

DELETE FROM 一時テーブル名 WHERE 条件;

サンプルコード

例えば、users_temp テーブル内の id=1 のデータを削除する場合、以下のSQLを実行します。

DELETE FROM users_temp WHERE id = 1;

テーブル内の すべてのデータを削除 する場合は、WHERE 条件を省略できます。

DELETE FROM users_temp;

なお、DELETE 文を使用しても、テーブル自体は削除されず、データのみが削除されます。

データの参照

一時テーブルに格納されているデータを取得するには、SELECT 文を使用します。

基本構文

SELECT カラム名 FROM 一時テーブル名 WHERE 条件;

サンプルコード

例えば、users_temp テーブル内のすべてのデータを取得する場合、以下のSQLを実行します。

SELECT * FROM users_temp;

特定の条件に一致するデータを取得する場合は、WHERE 句を使用します。

SELECT * FROM users_temp WHERE email LIKE '%@example.com';

このSQLでは、@example.com を含むメールアドレスのデータのみを取得します。

一時テーブルの使用時の注意点

1. セッションが終了するとデータも削除される

  • 一時テーブルは セッション単位 で管理されており、セッションが終了するとデータも削除される
  • 長時間の処理を行う場合は、定期的にデータをバックアップすることが推奨される

2. 同じ名前の一時テーブルが既に存在するとエラーが発生する

  • CREATE TEMPORARY TABLE同じ名前の一時テーブルを作成しようとするとエラー になる。
  • エラー回避策 として、DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS を事前に実行するとよい。
    DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS users_temp; CREATE TEMPORARY TABLE users_temp (...);

3. ストレージエンジンによる制約がある

  • 一時テーブルは MEMORY エンジンがデフォルト だが、データ量が多いと自動的に InnoDB の一時領域に保存される。
  • 大量データを扱う場合は、InnoDB の一時テーブルを利用するのが推奨される

まとめ

  • 一時テーブルは通常のテーブルと同じように データの挿入・更新・削除・参照 を行うことができる。
  • セッションが終了すると、一時テーブルのデータも自動的に削除される
  • DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS を事前に実行することで、同名のテーブル作成エラーを回避できる。
  • 大量データを扱う場合は InnoDB の一時テーブルを利用するのが推奨される

5. 一時テーブルの管理と削除

MySQLの一時テーブル(Temporary Table)は、セッションが終了すると自動的に削除されます。しかし、場合によっては明示的に削除する必要があることもあります。本セクションでは、一時テーブルの管理方法と削除方法について詳しく解説します。

一時テーブルの削除方法

一時テーブルを明示的に削除するには、DROP TEMPORARY TABLE 文を使用します。

基本構文

DROP TEMPORARY TABLE テーブル名;

サンプルコード

例えば、users_temp という一時テーブルを削除する場合は、以下のSQLを実行します。

DROP TEMPORARY TABLE users_temp;

このSQLを実行すると、users_temp テーブルは削除され、セッション内で再利用できなくなります。

セッション終了時の自動削除

一時テーブルは、セッションが終了すると自動的に削除されます。

自動削除の仕組み

  1. CREATE TEMPORARY TABLE で一時テーブルを作成
  2. セッションが維持されている間はデータを操作可能
  3. セッション(接続)が切断されると、一時テーブルは自動的に削除

ただし、以下のケースでは注意が必要です。

  • セッションが長時間維持される場合
    → 不要な一時テーブルがメモリを占有する可能性があるため、適宜 DROP TEMPORARY TABLE を実行するのが推奨される。
  • 大量のデータを扱う場合
    → ストレージの圧迫を避けるため、適切にテーブルを削除することが重要。

DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS の活用

一時テーブルを削除する際、存在しない場合にエラーが発生することを防ぐために、IF EXISTS を利用すると便利です。

基本構文

DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS テーブル名;

サンプルコード

DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS users_temp;

このSQLを実行すると、users_temp が存在する場合は削除され、存在しない場合でもエラーにならずにスルーされます。

よくあるエラーと対処法

エラー1:「Table not found」

発生条件:

  • DROP TEMPORARY TABLE で、存在しないテーブルを削除しようとした場合
  • 一時テーブルはセッション単位で管理されるため、別のセッションからは削除できない

解決策:

  • IF EXISTS を追加することでエラーを防ぐ
  DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS users_temp;
  • 正しいセッション内で削除を実行する

エラー2:「Table already exists」

発生条件:

  • 同じ名前の一時テーブルを作成しようとしたが、既に存在している

解決策:

  • 事前に DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS を実行する
  DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS users_temp;
  CREATE TEMPORARY TABLE users_temp (
      id INT PRIMARY KEY,
      name VARCHAR(50),
      email VARCHAR(100)
  );

一時テーブル管理のベストプラクティス

  1. 不要になったら明示的に削除する
  • DROP TEMPORARY TABLE を適宜実行し、不要なテーブルを解放する。
  1. エラー回避のために IF EXISTS を活用する
  • DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS を使うことで、存在しないテーブルの削除時にエラーを防ぐ。
  1. セッションの管理を意識する
  • セッションが長時間維持される場合、一時テーブルがメモリを圧迫する可能性があるため、適宜削除する。
  1. ストレージエンジンの影響を理解する
  • MEMORY エンジンを使用すると高速だが、データサイズに制限がある。
  • InnoDB を利用する場合は、ディスクスペースを考慮する必要がある。

まとめ

  • 一時テーブルは DROP TEMPORARY TABLE で明示的に削除できる。
  • セッション終了時には、自動的に削除されるが、長時間のセッションでは手動削除が推奨される。
  • DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS を使うことで、削除時のエラーを防げる。
  • 「Table not found」エラーや「Table already exists」エラーに対処する方法を知っておくと便利。

6. 一時テーブルの活用例

MySQLの一時テーブル(Temporary Table)は、データの一時的な保存や処理を効率化するために活用されます。本セクションでは、一時テーブルを利用する代表的なシナリオを紹介し、それぞれの実装方法について詳しく解説します。

1. データ集計時の中間テーブルとしての利用

データ分析やレポート作成の際、大量のデータを直接処理するとクエリの実行速度が遅くなることがあります。一時テーブルを利用すれば、一時的にデータを整理してから処理を行うことで、パフォーマンスを向上させることが可能です。

シナリオ

  • sales テーブルには1年間の販売データが格納されている。
  • 月ごとの売上合計を計算し、さらに詳細な分析を行いたい。

実装例

CREATE TEMPORARY TABLE monthly_sales (
    month_year DATE,
    total_sales DECIMAL(10,2)
);

INSERT INTO monthly_sales (month_year, total_sales)
SELECT DATE_FORMAT(sale_date, '%Y-%m-01') AS month_year, SUM(amount) 
FROM sales
GROUP BY month_year;

SELECT * FROM monthly_sales;

2. バッチ処理における一時データの保持

一時テーブルは、バッチ処理(データの一括処理)を行う際にも役立ちます。例えば、データを一定条件でフィルタリングし、処理対象のデータのみを一時テーブルに格納して処理 することで、効率的にデータを操作できます。

シナリオ

  • users テーブルの中から、過去1年間にログインしたユーザー のみを対象にメールを送信する。
  • 事前に対象データを一時テーブルに保存し、順次処理を行う。

実装例

CREATE TEMPORARY TABLE active_users (
    id INT PRIMARY KEY,
    name VARCHAR(100),
    email VARCHAR(255)
);

INSERT INTO active_users
SELECT id, name, email FROM users WHERE last_login >= NOW() - INTERVAL 1 YEAR;

SELECT * FROM active_users;

3. 複雑なクエリの簡略化

複雑なクエリを直接実行すると、パフォーマンスが低下しやすく、コードの可読性も悪くなります。一時テーブルを利用することで、サブクエリを減らし、クエリをシンプルにする ことが可能です。

シナリオ

  • orders テーブルの中から、売上トップ10の商品 を取得する。
  • サブクエリを使わずに一時テーブルを活用する。

実装例

CREATE TEMPORARY TABLE top_products AS
SELECT product_id, SUM(amount) AS total_sales
FROM orders
GROUP BY product_id
ORDER BY total_sales DESC
LIMIT 10;

SELECT * FROM top_products;

4. ロールバック不要な一時的なテーブル操作

一時テーブルは セッション単位で管理されるため、トランザクションの影響を受けません。そのため、ロールバックが不要な一時データの管理に適しています。

シナリオ

  • トランザクション処理を行う際に、一時的な計算結果を保持したい
  • しかし、エラー時に一時データがロールバックされるのは避けたい。

実装例

START TRANSACTION;

CREATE TEMPORARY TABLE temp_results (
    user_id INT,
    score INT
);

INSERT INTO temp_results
SELECT user_id, SUM(points) FROM game_scores GROUP BY user_id;

-- トランザクションをコミットする
COMMIT;

SELECT * FROM temp_results;

まとめ

  • 一時テーブルは、データ集計・バッチ処理・クエリの簡略化 など、さまざまな用途で活用できる。
  • 中間テーブルとしての利用 では、パフォーマンス向上やデータ整理に役立つ。
  • バッチ処理 では、事前に対象データを抽出し、不要なデータの処理を省略できる。
  • 複雑なクエリの簡略化 では、サブクエリを減らし、SQLの可読性を向上できる。
  • トランザクションの影響を受けない ため、ロールバック不要なデータ処理にも適している。

7. 一時テーブルの代替手段と制約

MySQLの一時テーブル(Temporary Table)は便利な機能ですが、いくつかの制約があります。場合によっては、ビューやサブクエリなどの代替手段を検討することで、より効率的にデータを処理できることもあります。本セクションでは、一時テーブルの主な制約と、それを回避するための代替手段について解説します。

一時テーブルの主な制約

一時テーブルには、通常のテーブルにはないいくつかの制約があります。これらを理解することで、適切なユースケースを見極めることができます。

1. セッション単位で管理される

  • 一時テーブルは作成されたセッション内でのみ有効であり、他の接続やユーザーからはアクセスできない
  • 同じ名前の通常テーブルが存在しても、同じセッション内では一時テーブルが優先される(通常テーブルにはアクセスできない)。

2. 一時テーブルのスキーマは保存されない

  • 通常のテーブルは SHOW CREATE TABLE でスキーマを取得できるが、一時テーブルは セッション終了とともに消滅 するため、スキーマ情報が保持されない。

3. インデックスの制限

  • CREATE TEMPORARY TABLEPRIMARY KEYINDEX を指定しないと、自動的には作成されない
  • 一時テーブルにインデックスを付与する場合は、手動で作成する必要がある。

4. デフォルトのストレージエンジンは MEMORY

  • MEMORY エンジンでは データ量が多くなると、ディスクへのスワップが発生し、パフォーマンスが低下する
  • InnoDB を指定すれば大容量データに対応できるが、その分ディスクの使用量が増加する。

5. トランザクションの影響を受けない

  • 一時テーブルは ROLLBACK しても影響を受けない
  • そのため、トランザクションの一貫性を保つ必要がある処理には適していない。

一時テーブルの代替手段

上記の制約を回避するために、一時テーブルの代わりに ビュー(View)やサブクエリ を活用することで、より柔軟にデータ処理を行うことが可能です。

1. ビュー(View)を利用する

ビュー(View)は、一時テーブルと似たように一時的なデータ参照を行う手段として利用できます。ビューは仮想テーブルとして動作し、データの一時的な保存を必要としない ため、ストレージの制約を回避できます。

ビューの作成

CREATE VIEW active_users AS
SELECT id, name, email FROM users WHERE last_login >= NOW() - INTERVAL 1 YEAR;

ビューの利用

SELECT * FROM active_users;
ビューを使うメリット

ストレージを消費しない(データは直接参照されるため、一時的に保存する必要がない)
セッションに依存しない(他のユーザーや接続からも利用可能)
スキーマの維持が可能(ビューは SHOW CREATE VIEW で定義を確認できる)

ビューのデメリット

更新が難しい(ビューを直接 INSERTUPDATE することは制限がある)
大規模なデータを扱う場合、パフォーマンスが低下する

2. サブクエリを利用する

一時テーブルを使わずに、一時的なデータ処理を行う方法として サブクエリ を活用することも可能です。

一時テーブルを使う場合

CREATE TEMPORARY TABLE top_products AS
SELECT product_id, SUM(amount) AS total_sales
FROM orders
GROUP BY product_id
ORDER BY total_sales DESC
LIMIT 10;

SELECT * FROM top_products;

サブクエリを使う場合

SELECT product_id, SUM(amount) AS total_sales
FROM orders
GROUP BY product_id
ORDER BY total_sales DESC
LIMIT 10;
サブクエリを使うメリット

一時テーブルを作成せずに済むため、パフォーマンスが向上する
ストレージを消費しない
セッションに依存せず、いつでも実行可能

サブクエリのデメリット

複雑なクエリの場合、可読性が低下する
データの再利用が難しい(同じデータを何度も参照する必要がある)

3. 共通テーブル式(WITH句)を利用する

MySQL 8.0 以降では、共通テーブル式(CTE: Common Table Expressions) を利用することで、一時テーブルを作成せずにデータを一時的に扱うことができます。

CTEを使った例

WITH top_products AS (
    SELECT product_id, SUM(amount) AS total_sales
    FROM orders
    GROUP BY product_id
    ORDER BY total_sales DESC
    LIMIT 10
)
SELECT * FROM top_products;
CTEを使うメリット

コードの可読性が向上する(サブクエリよりも見やすい)
パフォーマンスを最適化できる(一時テーブルなしで一時的なデータを扱える)

CTEのデメリット

MySQL 5.x では使用できない(MySQL 8.0 以降でのみ対応)

まとめ

方法メリットデメリット
一時テーブルセッション内でのデータ処理に適しているストレージを消費し、セッション終了時に消える
ビュー(View)ストレージ不要、セッションに依存しない更新が難しく、パフォーマンス低下の可能性
サブクエリストレージ不要、シンプル再利用が難しく、可読性が下がる
CTE(WITH句)コードの可読性向上、パフォーマンス最適化MySQL 8.0 以降でのみ利用可能

8. FAQ(よくある質問)

MySQLの一時テーブル(Temporary Table)に関するよくある質問をまとめました。一時テーブルの動作や制限について疑問を持つ方の参考になればと思います。

1. 一時テーブルは他のセッションから参照できますか?

いいえ、参照できません。
一時テーブルは、作成されたセッション内でのみ利用可能 です。他のセッションからはアクセスできず、別のユーザーが同じ名前の一時テーブルを作成しても、それぞれのセッションで独立したテーブルとして扱われます。

2. 一時テーブルの作成に必要な権限は?

一時テーブルを作成するには、データベースに対する CREATE TEMPORARY TABLES 権限 が必要です。
ユーザーに権限を付与するには、以下のSQLを実行します。

GRANT CREATE TEMPORARY TABLES ON データベース名.* TO 'ユーザー名'@'ホスト';

SHOW GRANTS コマンドで、現在の権限を確認することもできます。

SHOW GRANTS FOR 'ユーザー名'@'ホスト';

3. 一時テーブルはディスク容量に影響しますか?

はい、影響します。
MySQLの一時テーブルは、デフォルトでは MEMORY エンジンを使用しますが、データサイズが一定以上に達すると InnoDB の一時領域に保存されます

大量のデータを扱う場合、一時テーブルがディスクを圧迫する可能性があるため、不要になったら明示的に削除することを推奨 します。

DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS テーブル名;

また、ディスクへの影響を最小限に抑えるため、データ量が多い場合は MEMORY ではなく InnoDB で一時テーブルを作成すると良いでしょう。

CREATE TEMPORARY TABLE テーブル名 (
    カラム1 データ型,
    カラム2 データ型
) ENGINE=InnoDB;

4. 一時テーブルと内部一時テーブルの違いは?

項目一時テーブル内部一時テーブル
作成方法ユーザーが CREATE TEMPORARY TABLE で作成MySQLが GROUP BY などの処理時に自動作成
参照可能範囲作成したセッション内のみクエリの実行中のみ
削除DROP TEMPORARY TABLE で明示的に削除クエリ完了時に自動削除

5. 一時テーブルはスレッド間で共有できますか?

いいえ、できません。
一時テーブルは 作成したスレッド(セッション)内でのみ有効 であり、他のスレッドやプロセスからはアクセスできません。

この制限を回避したい場合は、一時テーブルではなく、通常のテーブルを作成する必要があります。

CREATE TABLE shared_temp_table (
    id INT PRIMARY KEY,
    data VARCHAR(255)
);

6. 一時テーブルを使うとパフォーマンスが落ちることはありますか?

はい、場合によってはパフォーマンスが低下することがあります。
特に、以下のケースでは注意が必要です。

  • データ量が多すぎる場合
  • MEMORY エンジンはデータサイズの制限があり、一定以上になると InnoDB にスワップされ、パフォーマンスが低下 します。
  • 対策: MEMORY エンジンの制限を超える場合は、最初から InnoDB で作成する。
  • 適切なインデックスが設定されていない場合
  • CREATE TEMPORARY TABLE ... SELECT で作成したテーブルには インデックスがコピーされない ため、検索が遅くなることがあります。
  • 対策: 必要に応じて ALTER TABLE でインデックスを追加する。
  ALTER TABLE 一時テーブル名 ADD INDEX (カラム名);

7. 一時テーブルのパフォーマンスを改善する方法は?

一時テーブルのパフォーマンスを向上させるためには、以下の方法が有効です。

MEMORY エンジンを利用する(小規模なデータなら高速)

CREATE TEMPORARY TABLE テーブル名 (
    id INT PRIMARY KEY,
    name VARCHAR(50)
) ENGINE=MEMORY;

必要なカラムのみ選択する(不要なカラムを省略)

CREATE TEMPORARY TABLE users_temp AS
SELECT id, name FROM users;

適切なインデックスを設定する(検索を高速化)

ALTER TABLE users_temp ADD INDEX (name);

不要になったらすぐに削除する(メモリを解放)

DROP TEMPORARY TABLE IF EXISTS users_temp;

まとめ

  • 一時テーブルは他のセッションやスレッドからは参照できない
  • 作成には CREATE TEMPORARY TABLES 権限が必要
  • データが多すぎると MEMORY から InnoDB にスワップされ、パフォーマンスが低下する
  • 適切なインデックスを設定することでクエリの高速化が可能
  • 不要な一時テーブルは DROP TEMPORARY TABLE で削除するのが推奨

これで、MySQLの一時テーブルに関する基本的な知識から活用方法、制約、代替手段、よくある質問までを詳しく解説しました。
一時テーブルを適切に活用することで、データ処理の効率を大幅に向上させることができます。